長雨が止んでやっと太陽が顔をみせた秋の一日、所属している《歩く会》の催しで茨城県土浦市を訪れました。土浦城址や古い街並みを散策した後、稲敷郡阿見町へ移動。かつて海軍航空隊の跡地にあった場所にある、阿見町立の「予科練平和祈念館」と自衛隊土浦駐屯地内の「雄翔館(予科練記念館)」を訪れました。

実は今回ここを訪問するとは事前に知らなかったので、畑の中に建つモダンな建築に思わず設計者を調べたり、雄翔館へ向かう際に自衛隊のゲートを通って基地内に入る事に驚いたり、仲間達とどちらかというと当初は少しにぎやかに足を踏み入れました。しかし、特に雄翔館に入ってからの小一時間、私たちは誰も言葉を発することなく、静けさの中ですごすことになりました。

阿見町にはかつて、海軍航空予科練習部(予科練)の訓練拠点が置かれていました。当時の予科練は志願倍率が実に73倍にも及ぶ超難関。狭き門をくぐり抜けた合格者はまさに選り抜きのエリートであり、学費が無料なだけでなく給料の支給もあり、家計の事情で進学を諦めざるを得なかった若者にとっても、予科練は学問と鍛錬の道が開かれた憧れの対象でもあったようです。

1968年に開館した雄翔館は、予科練出身の戦没者、特に神風特別攻撃隊員として亡くなった方々の慰霊と顕彰を目的として作られました。館内には一人ひとりの遺影と共に、遺書や遺品が丁寧に展示されています。

20歳前後の若者のあどけなさの残る遺影と共に、家族に宛てた手紙や遺書は、見事な毛筆のものも並んでいて、控えめな文章の端々から家族への深い愛が感じられます。それぞれの遺品や個人の足跡に触れていると、その人生が目の前に蘇ってくる感覚があり、気が付くと目頭が熱くなっていました。先を行く友人はハンカチを目元に当てていました。

展示には、仲間同士で肩を並べた白黒写真もあり、命を賭した最後の飛行を前にしているとは思えないほど、カメラに向けられた笑顔は明るく屈託のない表情の青年たちがそこに居ました。彼らの多くは、弱冠二十歳前後。現代であれば、将来の夢を描き、大学生活や趣味に心を躍らせているはずの青春期。現実の迫り来る運命を前に、彼らは何を想い、何を伝えたかったのか---言葉にならない葛藤と切なさが胸に迫りました。教科書や画面越しの「歴史の一幕」ではなく、かつてこの国で実際に喜びや悲しみを感じながら懸命に生きていた若者たちが居たという現実を目の当たりにして、やるせない感情が湧いてきました。

外に出ると青い空と霞ヶ浦の穏やかな景色が広がっていました。イデオロギーを超えて、ひとりの人間として命の重さと平和の尊さについて、深く考えさせられる一日となりました。機会があればぜひ足を運んでみてください。

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