WABAS Women’s Association for a Better Aged Society NPO法人 高齢社会をよくする女性の会

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全国大会in熱海 報告 10月27日(1⽇⽬)

 前日までの大雨が当日はすっきりと晴れ上がり、会場のガラス戸越しに見えた庭の緑が美しく目に映りました。というのも今回の会場は、熱海市指定有形文化財の起雲閣をお借りしたのです。人口4万人に満たない熱海市には、市民ホールがなく、この起雲閣は小規模なイベント会場として重宝がられています。ここに、大会1日目の10月27日は153名、2日目は143名という参加者が詰めかけました。会員だけでなくお世話になった熱海市の職員や市民の方も多数聴講にいらっしゃいました。

 基調講演1は内閣府男女共同参画局元局長の名取はにわ先生に、「男女共同参画・老若男女の生き抜く力」と題してお話しいただきました。名取先生は豊富な資料で、日本の男女共同参画行政は、国連と共に歩んできたことを強調されました。ことに今年は北京女性会議から30年の節目の年であり、名取先生は当時共同参画室長として北京女性会議に関わったことを懐かしく話されました。日本から5000人を超える女性たちが参加した、その熱気が残っていた1999年に「男女共同参画社会基本法」ができたといいます。にも関わらず、日本のジェンダー平等は世界に比しても遅れており、何が問題なのかを明らかにされました。日本の女性が家事・育児・介護を担っていることが背景にあり、現役の時の働き方の違いで男女の賃金格差が生じ、それが高齢の女性の貧困につながっていくと指摘されました。会場からは第3号被保険者についての見直しなどの質問も上がり、活発な意見交換が行われました。なお今年は女性参政権獲得80年で、初の女性首相が誕生したけれど、かつてのジェンダーバッシングが起こらないよう注視していきたいと締めくくりました。

 続く基調講演の2には落語家真打の林家たけ平師匠が若々しい着物姿で登場。昭和100年にちなんでの企画で、題して「昭和歌謡に見る女のあしあと」。歌謡曲に造詣の深いたけ平師匠が笠置シズ子さんの『東京ブギウギ』に始まり、島倉千代子さんのヒット曲『人生いろいろ』まで、全7曲をCDで披露し、女性たちの生きてきた証しをなぞるよう、当時の世相を解説いたしました。懐メロをかけると参加者もこぞって歌い出し、さながらカラオケ喫茶の様。歌の合間に話されるたけ平師匠の辛口のジョークでも、笑いの渦が起こり、早変わりの舞台転換も成功、最後は落語を一席ご披露してくださいました。その余韻、興奮は後々まで続き、高齢者にとって笑うこと、歌うこと、仲間とおしゃべりすることが、いかに大切なことかが、よくわかりました。

 続いての交流会は、和気あいあい、海の幸山の幸を味わい、熱海笛伶会の迫力に圧倒されながらも、旧交を温めていらっしゃいました。市長もご自身の介護体験を語るなど、最後までおつき合いくださいました。まさに「意義ある、記憶に残る」楽しい熱海大会の第一日でした。

(理事長 木村民子・記)

全国大会in熱海 報告 10月28日(2⽇⽬)

 WABASの第44回全国大会会場となった静岡県熱海市は、2023年3月の時点で高齢率が48.6%です。2040年に日本の高齢率は35%になるとされていますが、熱海では約15年前に35%を超えており、まさしく日本の超高齢社会を先取りしている自治体といえます。

 今回のシンポジウムでは、4人のシンポジストをお招きしました。まず、厚生労働省老健局(介護保険制度を担っている部署)の江口満総務課長から、日本の介護保険制度の仕組みと現在の介護保険サービス状況、そしてこれから制度の持続性を維持しつつ、質の高いサービス提供を確保していくための課題についてお話をしていただきました。

 次に、熱海市の健康福祉部長寿介護課保険室の高杉邦幸室長からは、熱海市における介護保険の現状を報告していただきました。熱海市も総人口が減少し続けている一方で、高齢者人口は増えています。但し、高齢者人口は2030年以降に減少すると予測されています。また、後期高齢者数の増加が著しく、単身高齢者の割合も全国や静岡県全体と比較して2倍以上に高くなっています。さらに、介護保険の受給率が高く、介護保険サービスの利用も増えていますが、熱海市でも介護人材の不足が問題になっているとのことでした。

 地域で訪問診療に従事している安達昌子医師からは、最期まで、その人らしい自律した人生を支えるため、地域に根ざした医療支援の継続を目標に、在宅緩和ケア充実診療所(機能強化型在宅療養支援診療所)の活動を報告していただきました。熱海市における在宅医療の供給体制は、今後の需要増加が見込まれているにもかかわらず地域完結率が低い。近隣の複数の市町との連携も検討しつつ、地域の在宅医療の持続可能性を確認・検討することが必要で、病院との連携も重要です。医療介護福祉従事者の数に限界がある状況で、相互の情報共有や連携体制の構築が必要とのことでした。

 最後に、熱海市社会福祉協議会介護サービス室の石橋真由美ケアマネジャーから、熱海社協が実践している訪問介護事業および居宅介護支援事業について報告していただきました。介護保険サービスのケアプランを作成しているケアマネジャーの立場から、医療や医療関係者との連携が難しいことがある。また、ケアプランを作成する際に地域の介護保険サービスが不足している問題がある。そして、法定業務外とされているケアマネジャーのシャドーワークについて、在宅ケア現場では、それでもケアマネがやらなければ、ほかにする人がいないといった仕事が山積している。さらに介護保険の認定に際して、介護度が下がることに異を唱える人がいますが、本人にはプラスのことである点を理解してほしいとのことです。

 シンポジストからの報告が終ったあと、会場からも様々な意見や要望がありました。「個人情報保護の問題から、病院に運ばれた知人の行方が分からなくなってしまったが、どこに問い合わせをすればいいのか」「ケアマネジャーが不足しているにもかかわらず、認定研修等が厳しすぎるのではないか」「介護ヘルパーの人材不足が問題となっているので、余力のあるシニア世代にヘルパー研修を受講してもらいたい」「介護人材の不足が懸念され、介護福祉士養成校においても学生数は激減している」等々、様々な意見や質問については、それぞれパネリストからの丁寧な解説が行われました。

(石田路子・記)